Changeling

1:旅立ち

 ローグ領 コルグの街にある孤児院で、一組の少年と少女が15歳を迎えた。

 少し癖のついた金色の髪をした、物静かな雰囲気の少年の名はアーシル。

 黒髪を腰のあたりまで伸ばした、背の小さな少女の名はセア。

 コルグの街の孤児院が面倒を見るのは、15歳未満の子供だけと決められている。

 15歳を迎えた者は成人と見做され、孤児院を退所しなければならない。

 アーシルとセアも例に漏れず、外の世界へと旅立つのだった。

 

 「それで、アーシル、セア。あなた達はこれからどうするつもりなの?」

 職員のシスターが二人の退所後の予定を聞いてきたが、答えは決まりきっていた。


 「シスター。僕とセアは傭兵になるつもりですよ。」

 アーシルはシスターが期待しているであろう言葉で答えた。


 身寄りのある者は、親の後を継いで農家や職人になることが多い。しかし、身寄りのない者、つまり孤児院出身者のような者は、土地などを領主から与えられていないため、猟師や傭兵になるのが一般的だ。

 猟師は動物を狩り、余裕があれば肉などを売って生活する。

 傭兵は、街や領主の依頼を受けて、モンスターや無法者から街を守ることで生活する。

 

 どちらにならなければならないという決まりはないが、基本的には戦闘に長けた者が傭兵となるケースが多い。



 「そう…あなた達ならきっと上手くやっていけるわ」

 そう言ってシスターはにっこりと笑い、二人の門出を祝福する。



 誰かが言っていた。

 コルグの孤児院は、毎年一定数の傭兵を輩出するため、領主や街から支援を受けることができている。傭兵がいることで、領主はモンスターの討伐に私兵を使わないで済み、街は治安を維持できているのだと。

 孤児院側としては、支援なしに運営できないため、出身者が傭兵となることを歓迎している。特に、アーシルとセアにおいては、最近の孤児院の子供達の中でも頭一つ抜きんでる戦闘能力を有していた。普段は厳しいシスターも、コルグの孤児院へさらなる名声をもたらすであろう二人の旅立ちに、上機嫌になっているようだ。


 「それではシスター、お元気で」
 「お元気でシスター…みんなも元気でね…」

 アーシルとセアは、シスターや残る子供達に別れの挨拶を済ませ、孤児院を後にした。